リーダーは、みんなに助けてもらえばいい 出口治明

創業7年目を迎え、2015年度版オリコン顧客満足度ランキング「生命保険部門」で
総合第一位を獲得するなど、多くの人々に支持され続けているライフネット生命。
そのライフネット生命は、いかにして始まり、ここまで来たのだろうか。そこで、代表取締役会長兼CEOである出口氏に立ち上げメンバーである吉沢氏との本対談で、

ライフネット生命でのマネジメント、チームの作り方、採用などについて語っていただいた。

 


出口 治明

ライフネット生命代表取締役会長兼CEO

1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。

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世界をちゃんと見るには方法がいる

吉沢さん:今日は、「これからのエリートだけが知っている仕事の強みの磨き方」という書籍の発売記念講演ということでこの場をもうけさせていただきました。
この本では、初期のライフネット生命での出来事を、かなり仔細に実例を挙げながら紹介しています。

これからのエリートだけが知っている仕事の強みの磨き方

これからのエリートだけが知っている仕事の強みの磨き方

そこで、今回はライフネット生命というベンチャー企業でマネジメントをしておられた出口さんからあまり表に出ないような、生々しいお話を聞ければと思います。

僕も創業前からライフネット生命におりましたので、「ここは、ライフネット生命をやっていてく上で大事にしていましたよね?」「こういうのは大切ですよね?」と質問を投げかけていくことで、この対談がベンチャー企業の立ち上げやマネジメントをしている方々の参考になればと思います。

また、会場のみなさんにもどんどん質問してもらいたいので、よろしくお願いします。
まず出口さん、いつものようにライフネット生命の紹介をしてもらえますか。

 

出口さん:こんばんは。みなさんは、いろいろな仕事をしていて自分の職場や仕事を理解してますよね。
でも、人間は向上心があるので、100%満足している人は多分いませんよね。
どこかを良くしたいとか、ここを変えたいと思うのが、普通の人間だと思います。
そういう意味では、みなさんひとりひとりが自分の周囲の世界を思う存分、
経営したいという世界経営計画を持っていると思います。
みなさんが神様だったら、世界はすぐに変わります。
でも、人間はそれができないので、自分は今のポジションで何をやっていくべきかを考えるしかない。
だから人間が働く意味は、世界経営計画のサブシステムだと。メインシステムは神様だと。

このように理解したら、まず世界の姿をちゃんと見ないといけない。
でも、人間は見たいものしか見ない動物です。
だから、世界をちゃんと見るためには方法論がいります。
それは、時間、歴史の縦軸と空間、世界の横軸で考えることです。
歴史と世界のことを見れば、自分のポジションがわかる。
でも、これはみんなが自然にやっていることです。
高校とか中学校の同窓会に行って、あいつ頑張っているなぁって思うことがあるでしょう。
それは昔のその人と今のその人とを比べて頑張ってるなぁと思っているわけですから。
タテヨコ比較をしているのです。

もう一つの方法は、国語ではなく、算数で考えることです。
簡単な例でいえば、人間にとって一番恐ろしい動物は何か?と考えたときに、
体重一トンもある人食い鮫が一番恐ろしいように思える。噛まれたら終わりだ、と。
でも算数に直せば、どの動物が一年間に人間を何人殺してるかになります。
そう考えたら、最も恐ろしいのは代々木公園で有名にもなった蚊です。70万人殺している。
その次は、実は人間で殺人が世界で年間40万件起きている。
じゃあ、人食い鮫は何人かといったら、10人です。
つまり、国語で考えるのと算数で考えるのとでは世界が違って見える。
もちろん、正しいのは、算数のほうです。

ライフネット生命の話をすると、
生命保険は何かといえば、皆さんの財布から一杯お金をもらう仕事だと。
で、調べたらフリーターやニートが原因だと思いますが、20代がとても貧しいことが分かった。
僕はこういう世界を見たときに、こんな世界は嫌だと思ったのです。
これだったら赤ちゃんは産まれないですよね。

 


ライフネット生命は缶ビールと同じビジネスモデル

 

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ライフネット生命代表取締役会長兼CEO 出口 治明氏

 

出口さん:そこで保険料を半分にして安心して赤ちゃんを産める社会を作りたいと思って、
60歳でライフネット生命を開業しました。

世界を見て、どこが嫌で自分は何ができるかを考えたら、
僕は生命保険しか知らないから、ライフネット生命を作るしか方法はなかった。
ライフネット生命が何故、今までの保険料の半分で売れるかといえば、
皆さんがインターネットを通じて保険を買ってくださるからです。
これは缶ビールのビジネスモデルです。
缶ビールを買ったら200円です。居酒屋でビールをのんだら500円です。
スーパーだと200円で買えるビールをなぜ居酒屋で500円とるんだと文句を言う人がいないのは、
その理由が皆わかっているからです。
居酒屋のお兄さんお姉さんの人件費、家賃、光熱費がかかっているなと思って、
500円を払っているわけです。そこまで考えないかもしれませんが。
だから、ビジネスモデルとしてはとても簡単です。

でも、このモデルの難しいところは、BtoCで形のないものを売るので、
信頼を得るのが難しいのです。
コマーシャルをやれば、ライフネット生命の名前を知ることはできるけれど、
名前を知ることと、この会社に安心してお金を預けられるということとは、全く違う話なのです。
では、どうやって信頼を得るかというと、難しくてまだ解はないのですが、
わかったことは、自分で発信するしかないということです。
自分の商売のことを自分で言わなくて、誰が言ってくれるのかという話です。
当たり前のことですけれど。
僕は、日本生命にいたときは、本も書かなかったし、
ブログも書かなかったし、講演もやりませんでした。
何故、ライフネット生命でやっているかといえば、自分で発信するしかないからです。
で、僕はいつも講演会場では大きい名刺をお配りして、
「皆さんに10枚くらいポケットに入れて持って帰って、ご友人にお渡しください。」と
お願いしています。
すみません。これを後ろに回してもらってもいいですか。(会場笑い)

 


仕事は、1人ではなにもできない。

吉沢さん:早速聞いていきたいと思いますが、
マネジメントするうえで出口さんが大事にしていた部分はどのあたりなのでしょうか?

 

出口さん:大事に思っているのは、仕事は1人ではなにもできないということです。
これは、医者とか学者がよく言っていますが、人間の能力というのは大したことがないので。
フルにケアしようと思ったら、だいたい2人か3人が限界です。
ということは、寝ないで仕事しても2人か3人しか面倒を見きれないのだから、仕事をしてもらおうと思ったら結局任せるしかない、
みんなに助けてもらうしかないというのが一番ですね。

 

 

吉沢さん:任せるという時に、出口さんは部下同士を組み合わせて考えるじゃないですか。
チームを作るときに、誰と誰を組み合わせるかの見極めはどうやっていたんですか?
僕の仮説は、そんなのよくわからないから、とりあえず試しに組んでみて実際にうまくいかなかったら、すぐに組替えする。うまくいったら、そのままさらに続けさせるのかな、と。
言い換えると、設計するのは難しいのではないかと思っているんですが。

 

出口さん:それは正しいでしょうね。
ただ、どういう組み合わせだからうまくいったという発想は、大企業の発想です。
人がいっぱいいて、だれでも選べるということが前提になっているので、
どのように組み合わせたらいいだろうかと考えられるのですけれど。
ベンチャーではそんな余裕はないので、
正直言うと暇そうな人にとりあえずやってもらうというのが、実態です。
その暇な人の中から、この仕事は誰が一番好きなのかを考えて、その人を中心にチームを作ります。「好きこそものの上手なれ」で、嫌いなことはみんな嫌ですから。



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